ケヤキの遺伝資源を効果的に保全・管理していく上で,地理的な遺伝変異を明らかにすることは重要である。被子植物においては,葉緑体DNAは,母性遺伝するとされており,種子の散布によってのみ移動が可能であることから,地理的変異を解明するのに適しているといわれている。葉緑体DNAの2領域(TrnL 5’exon – TrnL 3’exonおよびatpB – rbcL)を対象に,新潟県から熊本県までの6産地の各1個体を用いてシークエンス反応を行い塩基配列を決定した。その結果,atpB – rbcLのスペーサー領域で,九州の1産地(熊本県菊池市)とその他の5産地との間に塩基置換1サイト,挿入・欠失1サイトが確認された。今後は,今回検出された多型を用いて,ケヤキの地理的変異の調査を進めるとともに,新たな領域での多型の検出も併せて行っていく予定である。