日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: P1068
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立地I
二次林における土壌呼吸の時空間的変動予測に関する研究
*吉田 宗平山本 一清竹中 千里
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抄録
1.はじめに
現在大気中のCO2濃度の増加に伴う地球規模での温暖化が問題となっている。その中で森林の果たしている役割について社会的関心が高まっているが、森林の炭素循環中の重要なフラックスである土壌呼吸に関する知見は未だ十分ではない。土壌呼吸は、樹木の根による根呼吸と、微生物の有機物分解による微生物呼吸から構成されている。しかし土壌呼吸は時間的にも空間的にも変動が大きく、その変動を制御している要因についてもあまり解明されていない。そこで本研究は土壌呼吸と樹木位置との関係を調べることによって、土壌呼吸速度の空間的変動と時間的変動を予測するために必要な知見を得ることを目的とする。
2.対象地及び測定方法
対象地は愛知県西加茂郡藤岡町の二次林とした。アカマツ(胸高直径21.7 cm)、ソヨゴ(同6から9cm、株立)、コナラ1(同26.7 cm)、コナラ2(同13.6 cm)をターゲット木として設定し、樹木直下、1.5m地点、3m地点にチャンバーを設置した。CO2濃度測定装置に赤外線ガス分析計(LI-800,LI-COR)を用い、循環式密閉型チャンバー法により2001年6月から2002年12月に毎月1回対象地内において土壌呼吸速度を測定した。同時に地温,気温も測定し、土壌水分量も数回測定した。
3.結果
土壌呼吸速度は、特にアカマツとコナラ1において直下で高く、その他の地点で小さくなる傾向が見られた。一方でソヨゴとコナラ2ではそのような傾向はあまり見られなかった。
どのターゲット木における土壌呼吸速度も気温、地温と同様に明確な季節変化を示し、夏季に土壌呼吸速度は高く、冬季に低くなった。しかし、特に2002年8月に気温、地温はこの年の最高値を示していたが、土壌呼吸速度はその前後の月に比べて低い値を示した。また、地温、気温は樹木からの距離に対してほとんど変化しなかった。一方、多くの報告にあるように、土壌呼吸速度と地温や気温との間に非常に高い相関がみられた。土壌水分量は位置によって大きく異なることはなかった。
また、根呼吸の影響を最も受けていないと考えられる3mの土壌呼吸速度(SR)と地温(T)の関係を指数関数で表した場合、SR = 0.54e0.08Tで表された。この近似式で表した値を微生物呼吸とみなし、根呼吸の影響を最も受けていると考えられる各ターゲット木の直下の呼吸速度から引いたものと気温の関係の相関係数は、アカマツ、ソヨゴ、コナラ1で高い相関を示したが、コナラ2ではそれほど高い相関は得られなかった。
4.考察
多くのターゲット木、特に樹体サイズの大きいアカマツとコナラ1で樹木直下の土壌呼吸速度が高くなる傾向を示した。これは樹木の直下では植物の根量密度が高く、根呼吸が多くなり土壌呼吸速度も高くなるため、根量が多いと考えられるこれらの樹木でその特徴が顕著に表れたものと考えられる。また、直下と3m地点の温度に対する反応の違いから、樹木直下の土壌呼吸量を考慮に入れなければ、過小評価になる可能性が示唆された。
また、2002年8月に土壌呼吸速度が低下したことから、特に夏季の高温少雨の季節において、温度のみで土壌呼吸量を推定した場合、過大評価になる可能性が示唆された。
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© 2003 日本林学会
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