日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: P1203
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特用林産
マイタケ菌床栽培における培地へのハトムギ添加効果
*佐藤 博文菅原 冬樹
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抄録
 豊富な森林資源の活用をはかるため、キノコの子実体増収に寄与する有用な成分を生薬類に求めてきたなかで、演者らは、これまでにヨクイニン粉砕物にヒラタケ子実体の増収能を認め、その効果を実証している。本研究では、ヨクイニンとその原料であるハトムギ粉砕物をマイタケ菌床培地に添加して、子実体収量の調査を行った。供試種菌は、森51号(森産業株式会社)を用いた。ヨクイニンは、市販品(ウチダ和漢薬)を、また、ハトムギは、広島県大和町産のものを殻ごと粉砕して用いた。なお、ハトムギは事前に風選し、内容が充実している順に製品、二番選および二番の3等級に大別し、それぞれを供試した。栽培試験は、市販のPP袋に一菌床あたり培地2.3kgを充填して行った。培地は、培養基材として、広葉樹オガコ2、廃ホダ8の容積比で混合したものに、栄養源195g(乾重、培地全重の8.5%に相当)の添加を基本とし、含水率が約65%となるように水を加えた。試験区は、栄養源の組成を変えることにより計12試験区設定した。試験1では、対照として、フスマ単独(1区)およびフスマ1、コーンブラン1の容積比で添加した(2区)2試験区を設けるとともに、これら栄養源をそれぞれヨクイニンにより4または8%分置換した3、4および5区を設定し、効果的な添加方法や割合等を見積もった。また、試験2では、試験1に対比して、3種類のハトムギを主にコーンブランと置換するかたちで4または8%ヨクイニン相当量を添加した6試験区と、栄養源195g分を全て二番ハトムギで置換した(12区)計7試験区を設定した。なお、各培地の供試数は1試験区8袋とした。調製した培地は、常法により直ちに高圧蒸気滅菌後、一晩放冷して種菌の接種を行った。培養は、温度22℃、相対湿度65%の暗条件下で50日間行った。発生操作は、菌床を温度17℃、相対湿度90%以上の連続照明条件下において原基形成を促し、管孔が開いた時点をもって、子実体の収量を調査した。試験1の結果においては、ヨクイニンをコーンブランに代えて4%添加した3区に若干の増収傾向がみられ、対照区(1、2区)の平均収量がそれぞれ392.5、378.0g/菌床のとき、3区では414.3g/菌床を示したが、これをフスマと代えた4区にそうした傾向は認められなかった。一方、ヨクイニンの添加量を8%に倍増した5区の収量は、329.2g/菌床と顕著に減少した。また、試験2の結果からは、こうした傾向がさらに確認された。すなわち、3区における4%ヨクイニン相当量を様々なグレードのハトムギで置換した6、8および10区では収量の増加が認められ、特に製品と二番選級を添加した6、8区では、いずれも485g/菌床前後の収量を示し、対照区収量に比べて二__から__三割増加していたが、これらの倍量を添加した7、9および11区では、400g/菌床前後の収量にとどまり、いずれも4%区のそれより低かった。発生状況においては、2区で収穫に要した日数がやや長くなる傾向はあったが、残りの試験区に大差はみられなかった。また、収穫時の形態においては、1区で葉が小さく茎の目立つものが多く、5区で未分化の生育原基が部分的に散見された。以上の結果から、ヨクイニンおよびハトムギ粉砕物4%の培地添加により、マイタケ森51号における子実体発生量の増加が確認され、ヨクイニン成分による効果以外に、殻部分の添加も増収に大きく寄与することが示唆されたが、他方では、これらの大量添加により逆に収量が低下することも明らかとなった。マイタケの収量を左右する要因として、栄養源以外では、一般に培地の通気性や保水性および水分含量が大きく関係しているといわれ、培地に使用するオガコの材質や粒径などによって収量が変化することが知られている。本試験において供試したハトムギ粉砕物は、直径1.5mm程度のメッシュを通過したものであるが、殻の効用について探るためには、今後こうした物理性の面からも検討する必要があるだろう。
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© 2003 日本林学会
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