抄録
2001年に森林・林業基本法が改正され、またそれが示す政策指針に沿って、一連の林政改革が行われている。その中で、民有林への森林機能区分の導入が行われた。これは、今後の森林整備に重要な役割を果たす可能性がある。高知県はこの機能区分導入にあたって、区分毎の整備方針と補助事業の差別化を明確に打ち出した。本研究では、この高知県の取り組みとそれへの所有者の反応について調査し、機能区分に基づく森林整備にまつわる問題点について整理した。二点を指摘した。第一に、高知県が示した明確な整備方針に対する所有者の反応から見えてきたのは、木材生産を積極的に行うつもりはないが、しかし、完全にあきらめて、混交林化するつもりもない、という多くの所有者の姿であった。ゾーニングは、それによってゾーン毎の森林整備の方向を明確にしようとするものであるが、所有者の反応が鈍い。第二に、水土保全林における複層林化、混交林化において、一般の森林所有者にも受け入れられるような現実的な施業方法が未確立であり、解決しなければならない問題として残っている。