日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: P2179
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T7 我が国の広葉樹二次林における生産量および炭素固定機能の評価
落葉広葉樹二次林における根系の相対成長関係
*糟谷 信彦齋藤 秀樹高原 光植苗 幸司徳田 利春
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抄録
1.はじめに森林の炭素固定機能は大気中の二酸化炭素濃度上昇を軽減するための方策として大きな役割を期待されている.根系は植物体の中でも炭素貯蔵器官として重要な位置を占めている.根量の正確な推定のためには,さまざまな樹種,樹木サイズのデータが必要となるものの特に広葉樹二次林においてはこれまで十分なデータが得られているとはいいがたい.今回スギの混交する落葉広葉樹二次林に根量を測定し,相対成長関係について解析した.2.材料と方法京都府立大学久多演習林内の落葉広葉樹二次林において2001年8月から2002年6月にかけて現存量調査を行った.調査地は,標高約600__m__であり天然生スギの混交する冷温帯落葉広葉樹二次林である.調査区の大きさは30 m x40m(斜距離)で,その中にはミズナラ,アカシデ,クマシデ,スギ,ミズメが優占し,その他ブナ,アオハダ,マルバマンサク,ウリハダカエデなどが生育していた.毎木調査結果から樹種毎の胸高断面積合計の大きい順に並べると,アカシデ,スギ,ミズメ,ミズナラであった.調査区内の胸高直径(以下Dとする)最大値はスギの45.0 cmであった.幹の地際における年輪解析によれば,スギが最大約100__から__120年,ミズナラが最大約60年,その他の広葉樹が最大約50年であった.すなわち,攪乱後50__から__60年経過した林分であった.根量測定は次のように行った.根株と一次根(本研究では根株より直接分岐している直径5mm以上の根と定義する)の境界で切断した後に,チルホールを用いて一次根を掘り取り,その際直径5 mm以上の根がちぎれた場合には根が直径5 mm未満になるまで追跡した.掘り取ってから直径5 mm未満の細い根はノギスで測定しながら切り落とした(直径5 mm未満の根については別に土壌ブロックサンプリングにより面積あたりの現存量を推定した).その後一次根の長さと生重を測定し,根の試料全部あるいは一部を乾物率測定のため持ち帰った.根量測定は,アカシデ(5),スギ(7),ミズメ(4),ミズナラ(4),クマシデ(2),アオハダ (1),ウリハダカエデ(1),コハウチワカエデ(1),コシアブラ(1),ソヨゴ(1),マルバマンサク(1)の11樹種28本について行った(かっこ内はそれぞれの本数を表す).相対成長式Y=aXhを用いてD,D0.0(地際直径),あるいはD2H(H:樹高)と一次根重,個体あたりの根量,地上部重などとの関係を調べた.3.結果と考察試料木のD,D0.0の範囲はそれぞれ5__から__22,7__から__33 cmであった.個体あたりの一次根の本数をみると,同じ樹種の中ではDが大きくなると増える傾向があったが,樹種別でみればスギやアカシデ,ミズメで多く,ミズナラやコシアブラで少なかった.図-1に広葉樹(スギは省略)におけるD2H,D2,あるいはD0.02に対する根量の相対成長関係を示す.その結果 D2で決定係数が大きかった.また,スギにおいては三者で決定係数の大きさはほぼ同様であった.地下部現存量(根量)を求める際に実測していない場合これまでT/R比=一定とされることが多い.本研究ではT/R比0.85__から__6.4とばらついたが,D>10cmに限定すると広葉樹,スギの平均でそれぞれ3.9(1.8__から__6.4, n=17),4.1(2.9__から__6.2, n=5)となった.さらにD>15cmでは広葉樹,スギでそれぞれ4.4(3.7__から__6.4, n=8),3.7(2.9__から__4.8, n=3)となった.同一樹種の中で比較したところサイズによる傾向は明らかではなかった.各樹種で一次根についても相対成長関係を調べ,これと一次根長などから根系構造を定量的に評価し,林分の根量推定値に与える影響について検討する
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© 2003 日本林学会
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