抄録
1. 背景・目的 青森県では平成14年3月に「青森県森林・林業基本計画」を策定し、今後広葉樹林の整備も重要であるとの認識に立っており、今後広葉樹林の整備とその利用にこれまで以上の注目が集まると考えられる。しかしながら、現在県内に存在する広葉樹二次林(民有林ではコナラの占める割合が高い)に対しどのような施業を行うか、具体的に有効な管理手法が提示されているとは言い難い。 よって本研究では、異なる本数密度で管理されたコナラ林において、林分毎の15年間での構造の変化を把握し、各林分の比較・検討を行うことを目的とした。それによりコナラの形質優良木生産に向けた間伐法の一つの可能性を提示した。2. 調査地と方法 林分調査は青森県八戸市に隣接する、福地村の民有林で行った。樹種は主にコナラであり、林齢42年生時にha当り成立本数を200本、400本、600本に間伐したプロットと対照区が設定されている。これらのプロットは西向きの斜面に隣り合うように設定されている。各林地の大きさは20m×20mであり、間伐後15年経過した2001年に林分調査および成長錘による資料の採取を行った。これらのデータをもとに林分材積の比較、枝下高変化と密度の関係、成長予測による今後の間伐の必要性等を検討した。3. 結果1) 材積成長量 各プロットの15年間の総成長量は200本区が104m3、400本区が121m3、600本区が153 m3、対照区が135 m3であった。間伐がなされたプロットだけを見ると本数が多いほど成長量は大きい。各プロットのクローネ占有面積の割合もこれと同様の結果である。対照区は樹冠占有割合が高くなりすぎ成長量が低下したとも考えられる。また対照区では枯損木が発生しており、このことが原因で間伐区の600本区に比べ成長量が劣っていると考えられる。2) Y‐N曲線 この試験地に対し行われた間伐は全層間伐であった。間伐がされる前の林地は対照区が最も大径木が多かったが、間伐後15年経った現在では間伐がされた3プロットの方が大径木の多い状況となっている。この事から対照区が立木本数は多く蓄積量も多いが、大径木が少ないということが確認された。3)連年成長量 間伐がされたプロットでは個体差があるが間伐による成長量の増加が確認された。間伐後の年平均成長量を間伐区毎に比較すると600本区<400本区<200本区となっていた。 しかし各間伐区で間伐後、5年毎に年平均成長量を比較すると、200本区が最も成長量が低下しているのが分かった。この成長量の低下の割合は200本区で35%。400本区は25%、600本区は10%それぞれ成長量が低下していた。4) 枝下高変化 今回の調査では全てのプロットで枝下高の低下は見られなかった。400本区に関しては1mほどの枯れ上がりが確認された。最も枝下高に変化があったのは対照区であり1.83m高くなった。600本区でも1.69m高くなっていた。4. 考察 胸高直径の肥大化を促進させる効果は各間伐区で確認され、なかでも200本区の間伐後における成長量の増加が最も大きかった。高い枝下高維持・獲得に関しては最も強度に間伐した200本区でも枝下高の低下(後生枝の発生)は確認されなかった。このことから今後木材生産を目的とした林齢40年生程の広葉樹二次林(コナラが優先している林地)においては、haあたりの残存本数を200本にまで落とすことも可能であることが示唆された。