日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: F08
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生態
里山広葉樹二次林における細根量の測定
*鈴木 麻友美檀浦 正子金澤 洋一小南 裕志後藤 義明
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キーワード: 細根, 現存量
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抄録

森林生態系において、根系は吸収機能を主とした重要な役割を担っている。特に、細根は高い養分吸収活性をもち、発生から枯死、分解までの回転が早く、物質循環に大きな影響を与えていると考えられる。細根分布状態や根量を把握することは物質循環を解明する上でも重要であると考えられるが、落葉広葉樹林における研究例は少ない。そこで、本研究では直径20cmの大型の採土円筒を用いたサンプリングにより、落葉広葉樹二次林における細根の分布特性の解析を試みた。また、この調査地において、直径2mm以上の根については掘り取りによる現存量の推定がなされているため、この値と比較して全根量に対する細根量の評価を行った。調査地は京都府相楽郡山城町に位置する山城試験地で、コナラを優占種とし、針葉樹を含む広葉樹二次林である。年間降水量は1449.1mm、年平均気温は15.5℃であり、土壌は花崗岩由来の未熟土である。土壌採取には直径20cm、高さ15cmの塩ビ管を使用した。試験地の起伏を考慮して、尾根、谷で各2箇所、中腹で7箇所土壌を採取した。土壌は、有機物層を採取した後、B層を10cm毎に採取し、B層上部10cmからB1、B2、B3、B4とした。A0層、A層の分離が見られる谷部ではA0層、A層を分けて採取した。脱イオン水を用いて目の大きさが2__mm__、590μm、177μmの篩の上で土を洗い流し分別した。篩上にある根は生死を区別し、生きている根は直径2__mm__ 以下、2__mm____から__5__mm__、5__mm____から__2cm、2cm__から__5cm、5cm以上の5段階に分け、直径2__mm__以上の根に関してはその直径も記録した。ここでは、直径2__mm__以下の根を細根とし、それぞれの乾燥重量を根重とした。また、中腹においては細根がバイオマスとして占め占める割合を評価するために、中腹での土壌コア採取場所付近において59.5__m2__のプロットを区切り、毎木調査を行ったサンプルを採取した地点の土壌の層状構造を見ると、尾根は、A層が存在しなかった。B層は30cmほどで岩が出現しており、土壌表層付近で細根がシート状に密集していた。中腹はA0層がみられず、谷はA0層、A層ともに存在した。平均細根量は尾根692.47g/__m2__、中腹287.34g/__m2__、谷414.77g/__m2__となり場所によって2倍程度のばらつきが見られた。また、尾根のみに直径5cm以上の根が分布しており、全体的に見て、尾根には細根とそれよりも太い根が多く見られた。中腹に設けたプロットにおいて、2__mm__以上の直径をもつ根の現存量(y)を、以下の推定式(檀浦2002)に毎木調査のデータを適応して算出した。y=13.549x2.6398(R2=0.9792)x:地際直径中腹で採取した7箇所の平均値を中腹での細根量とすると、地下部現存量30.27t/haのうち、9%を細根が占める結果となった。各地点とも土壌が深くなるにつれ細根量は少なくなり、B層20cmまでに全細根量の80%以上の細根が存在した。A0、A、B1層では枯死根量の占める割合が多く、細根は土壌上層部で枯死再生を盛んに繰り返していると考えられる。

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© 2003 日本林学会
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