日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: B37
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防災
粘土団子種子を用いた足尾松木沢での緑化試験(2)
*水谷 完治黒川 潮鴨志田 武
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抄録
 本研究は栃木県足尾町松木沢のような緑化が極めて困難な場所での安価な緑化法開発を目的として開始した。福岡正信が考案した粘土団子種子は砂漠緑化や稲作に用いられているが、粘土団子種子は粘土でコーティングされているため、種子が動物に食べられることもなく、腐敗もしにくいとされている。また、粘土のコーティングは従来のスラリー方式(養生材、化成肥料、土壌改良材、水などを用いる方法)に比べ、種子に適度なストレスがかかるため、種子自体の環境適応機能が向上すると推測できる。そこで、足尾松木沢のような極めて劣悪な立地環境での緑化を安価に実行するため、土留工の施工は行わず、粘土団子種子を散布するだけの方法が適応できるかどうかの試験を行っている。今回は発芽より2年目の植生調査を行い、生育状況を報告する。 粘土団子種子の作成方法は以下のようである。小型のコンクリートミキサーを用い、ミキサーの中で種子を転がしながら、粉末の粘土と水を交互に入れ、コーティングする。このような作業を30分程度続けると、大量の粘土団子種子を作ることができる。試験地は栃木県足尾町松木沢の崩壊地に設定した。使用種子は木本類としてクロマツ、アカマツ、カラマツ、イタチハギ、ダケカンバ、ヤシャブシ、草本類としてイタドリ、ススキ、ヨモギとし、これらの種を混ぜ、粘土でコーティングし試験地に散布した。秋播きを平成13年10月20日、春播きを平成14年4月23日に行い、2度播きしている。散布密度は従来のスラリー式より小さくして200粒/m2とし、木本類と草本類の粒数割合は1:3、散布面積を47m2とした。植生調査は平成14年9月19日及び平成15年10月30日に行い、成立本数及び樹高を測定した。 当初よりクロマツの発芽・生長が良好であった。成立本数は0.252本/m2(ha当たりに換算すると2520本)で推移している。これは、同じ個体が維持されたのではなく、雪による表面の土砂移動に伴って枯損した個体がある反面、2年目に発芽したものもあり、トータルとして同じ本数が維持された。平均樹高は平地苗畑等と比較すると小さいが、4.8cmから10.2cmと順調に生長している。越冬後2年目の枯損は比較的少なく、成立本数を維持しながら、順調に生長しているため、今後、比較的規模の大きい土砂移動が発生しないかぎり、数年は、この程度の成立本数は維持しながら、生長していくと予想される。 今後は、このような調査を継続して行うと共に、従来から行われているスラリー式との比較試験、並びに足尾松木沢流域周辺の種と同種の粘土団子種子を用いて多種多様な森林造成を目的とした緑化試験を考えている。
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© 2004 日本林学会
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