抄録
34_から_58年生のスギ人工林での広葉樹の種多様性を、隣接広葉樹林からの距離との関係で解析した。樹高1m以上および1m未満の広葉樹は、出現種類数・本数密度・多様度指数(H')ともスギ人工林の内部に向かうに従って減少する傾向があった。また、広葉樹林および広葉樹林との界(境界)に対し、各プロットのパーセント類似度も同様にスギ人工林の内部に向かうに従って減少する傾向があった。各広葉樹の出現パターンを調べるために、広葉樹林からスギ人工林までを3区分し、分布の偏りを調べた。ほとんどの広葉樹が、低密度ながら広葉樹林ないし境界に出現する傾向があったのに対し、ウワミズザクラ・ヒメアオキ・ムラサキシキブなどは全区画で他の樹種よりも本数密度が高く、スギ人工林の内部で最も高かった。以上のことより、スギ人工林での広葉樹の種多様性は、種子源である隣接広葉樹林からの距離の影響が大きいと考えられた。ウワミズザクラ・ヒメアオキ・ムラサキシキブなどは、スギ人工林での多様性の維持に貢献度が高いと考えられた。ブナ科樹種は、低密度で広葉樹林ないし境界で出現する傾向があり、徐々に分布を拡大する傾向がみられた。しかし、優占度を高めるためにはかなり時間を要すると考えられた。