日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P1027
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生態
ナラ集団枯損被害がきのこ群集の空間分布に及ぼす影響
*宗田 典大小谷 二郎江崎 功二郎
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抄録

1.はじめに 本研究はミズナラ集団枯損被害(以下:ナラ集団枯損)がきのこ相に与える影響を調べる目的で、2001_から_2003年の3年間について、ナラ集団枯損被害発生からの経過に伴う、きのこ相の動態について調査したので発表する。2.調査地および調査方法 調査地は、石川県加賀市刈安山(標高547m)のミズナラ・コナラ・カシ類の優占する二次林である。この林分は、1998年よりナラ集団枯損被害が発生し、現在、未被害地も存在するが、大半が被害の拡大および終息地である。 調査は2001年6月に、plot1:未被害地 (標高450-500m)、 plot2:被害が進行中である激害地 (標高300-350m)およびplot3:終息地 (標高200-250m)の3ヵ所に45m方形区を設置し、これらの調査地について、地上生菌根菌子実体(以下:きのこ)の動態調査を行った。調査区内のきのこ発生箇所に番号をつけたピンを刺し、調査終了後に位置を測量した。plot1は2001年に、plot2は2000年に、plot3は1998年にナラ集団枯損被害が発生した。調査は2001から2003年のそれぞれ6月から11月に2週間おきに行なった。 またプロット内の高木層の立木位置および林冠ギャップの範囲を測量し、きのこの発生位置との関係を観測した。3.結果と考察 2003年には、ナラ集団枯損による新たなギャップの発生はなかったが、2002年までに発生した各プロットのギャップ率は、plot1が約10%、plot2が約20%、plot3が約40%であった。きのこの発生は、主にギャップ林縁部および林内に見られ、ギャップ内部できのこの発生はほとんど観察されなかった。 各プロットにおいて、きのこの発生位置と立木位置との分布相関関係を樹種別にω指数(Iwao 1977)を用いて解析した。結果、plot1ではコナラときのこの分布相関は両種が正の相互関係があり、シデ類についてもコナラとほぼ同様で、コナラおよびシデ類に対するきのこの分布様式に大きな違いはなかった。またplot2のコナラおよびカシ類おいても、plot1のコナラ、シデ類と同様の正の関係を示した。しかしplot1およびplot2のミズナラときのこの分布相関においては、負の関係が観察された。 plot3においては、きのこと樹木の分布相関では、正の相互関係を示す関係は観測されず、区画面積の増加に伴い、独立またはランダム分布する傾向が示された。 以上の結果から、きのこはミズナラよりもコナラ、シイ類およびカシ類との相互関係が強いことが考えられた。また林冠ギャップの形成が、きのこの空間分布に影響を与えることも推測された。

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© 2004 日本林学会
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