日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P1030
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生態
リターフォールからみた三宅島の噴火被害林の生産力と機能
*羽柴 敬子上條 隆志加藤 拓島田 和則樋口 広芳
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抄録

【目的】
伊豆諸島・三宅島は東京都から南南東に約180km離れた太平洋上の火山島である。島の中央に位置する雄山は2000年6月に噴火活動を開始する以前の500年間に13回噴火する火山である。 2000年の噴火は噴火直後の大量の火山灰噴出とその後2004年現在まで続いている火山ガスの長期的な放出に特徴づけられる。これにより島の森林群落は大きな影響を受けている。本研究は、噴火の影響を受けた森林(噴火被害林)の生産力と機能を、そのリターフォール量を測ることによって考察することを目的とした。
【調査地および方法】
 本研究では島内の5つの固定調査区を対象とした。比較的被害(枯死木の割合)の大きい南西部の火口へ続く南戸林道沿いには10m×10m の調査区を4つ(N1 _から_N4)設け、各コドラート内に直径50cmのリタートラップを4つ設置した。同林道沿いでは火口に近いほど樹木被害が増加する;N1・N2 は樹木個体の大半がほぼ完全に落葉(全面落葉)しており、一部の樹木に胴吹きが認められる。N3・N4と標高が下がるにつれて、樹冠の葉が残っている個体や胴吹きをしている個体の割合が増し、N4 ではほとんど被害が認められない。被害が最も軽微である島の北西部のスダジイ自然林には、噴火以前から20m×30m の方形区(CL)が設けられており、ここも調査対象とした。同調査区内には直径41cmのリタートラップが15個設置されている。リターは2002年2月から1年間採集した2001年12月からの年間量を測定した。厳しい入島規制のため、リター採集は不定期(年5回)となった。採集したリターは80℃48時間乾燥させ、葉・枝・樹皮など計7項目に分別し重さを測った。
【結果および考察】
 2001年12月から2002年11月における南戸林道沿い(N1_から_N4)の年間リター量は、標高の高い地点から順に7.7t/ha、4.8t/ha、3.7t/ha、8.6t/haであり、被害が最も軽微なCLは9.0t/haであった。リター総量に占める落葉量の割合を同順に見てみると、2%(0.2t/ha)、10%(0.5t/ha)、24%(0.9t/ha)、74%(6.2t/ha)、CLでは51%(4.4t/ha)となり、被害が大きい森林ほどその割合は小さくなる傾向があった。一方樹皮量の割合は逆の傾向を示した:N1・N2・N3・N4・CLの順に36%(2.7t/ha)、30%(1.4t/ha)、24%(0.9t/ha)、1%(0.1t/ha)、3%(0.2t/ha)であった。
 以上をまとめると:1)被害の大きい森林群落ほど落葉量が少なく樹皮量が多い;2)被害林で生産された落葉は主に胴吹きシュートに由来し、その生産量は健全林の落葉量の1/30_から_1/5であった。

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© 2004 日本林学会
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