日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P2061
会議情報

経営
茨城県友部町における土地利用の変化について
*佐野 真琴宮本 麻子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 森林は多様な機能を持ち、国民の重要な生活の基盤となっている。また、地球温暖化問題では森林の二酸化炭素吸収源としての機能も注目されている。このように、森林に期待される役割は木材の生産といった直接的経済効果から、公益的機能の発揮へとシフトしている。これらの公益的機能は、森林が適切に管理されていれば十分発揮可能と考えられるが、近年の社会構造の変化や木材価格の低迷から手入れが十分でない森林が増加している。茨城県の県南西部から県央地域に広がる平地林においては、首都圏域に位置することから都市化の進展とともに平地林の減少、荒廃が進んでいる。このため県は平成5年から6年間平地林の保全と管理のため平地林保全特別対策事業を実施し、平成11年から新たな平地林保全対策を進めている。本報では、この事業が実行されている地域を対象とし、平地林がどのように変化しているかをランドモザイクの変遷過程としてとらえ、実態を把握しようとするものである。これにより平地林の保全や整備の基礎資料が提供できる。 対象地域は、茨城県第2次平地林保全整備基本計画の対象区域で、かつ、2000年林業センサスにおいて森林が著しく減少した地域として選定した結果、友部町とした。ここで、基本計画でいう平地林とは、地勢条件で標高150m以下、かつ、傾斜15度以下に所在する森林で、対象区域は市町村単位とし、平地林面積が70%以上ある市町村が指定されている(水戸市ほか62市町村)。 友部町の最も古い空中写真(1960年撮影)と最も新しい空中写真(1998年撮影)を利用し写真判読を行い、結果を2万5千分の1地形図上に図化した。判読区分は、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林、竹林、二次草地、植栽樹群、果樹園・苗圃・桑畑・茶畑、水田、畑地、人工草地、造成裸地、自然裸地、緑の少ない住宅地、緑の多い住宅地、開放水面の16区分で、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林、竹林については樹高による区分も行った。 作成された土地被覆区分図をGIS(ArcView3)へ入力した。入力されたデータをもとにGISの計算機能を用い各ポリゴンに属性として面積と周囲長を付加した。各ポリゴンの面積データから土地被覆区分毎に面積を集計した。また、2時期(1960年、1998年)のデータを用い土地被覆区分別面積のクロス集計を行った。 1960年と1998年の土地被覆区分の結果を林地(常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林、竹林を集計。以下同じ。)、草地(二次草地、植栽樹群、人工草地)、田畑(果樹園・苗圃・桑畑・茶畑、水田、畑地)、住宅地(緑の少ない住宅地、緑の多い住宅地)、その他(造成裸地、自然裸地、開放水面)の区分へまとめ土地被覆区分の割合を計算した。これより、林地、田畑の割合が減少し、草地、住宅地、その他の割合が増加している。草地の増加は、造成・伐採・耕作地の放棄によるものと、ゴルフ場開発等による人工草地の増加とによるものであり、また、住宅地の増加は対象地域が首都圏域に位置し都市化の進展が著しいためで、人為活動による影響の大きさが確認された。 上述の土地被覆区分で1960年に林地であったものが1998年ではどのよな土地区分となっているかをクロス集計の結果より算出した。林地がそのまま林地として残ったのは63%であり、林地が開発されていることが分かる。1998年に林地以外の土地被覆となった区分の詳細を面積の多いものから見ると、1番目は緑の少ない住宅地、ついで果樹園・苗圃・桑畑・茶畑、畑地、人工草地(ゴルフ場、公園等)となっている。この結果より、林地の多くは住宅地と農用地となっていることが分かった。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top