日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P2126
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造林
富士山火山荒原の先駆木本植物ミヤマヤナギに対する外生菌根菌の宿主特異性
様々な植生遷移段階から分離した多様な菌株を用いて
*奈良 一秀
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抄録
外生菌根菌は樹木の養分吸収を助け、その成長を促進することが知られている。このような外生菌根共生の生理機能は、菌根菌が植物に感染しなければ発揮されることはない。それぞれの菌根菌が感染できる宿主の範囲は大きく異なり、それぞれの植物種に共生する菌種構成や種数にも大きな違いが見られる。このような菌根菌の宿主特異性を調べるため、様々な植物群落から多数の菌根菌を分離し、富士山火山荒原の先駆木本植物ミヤマヤナギに対する宿主特異性を、網羅的な接種実験によって調べた。全部で105種(未同定種を含む)から130の菌株を収集できた。収集菌株には、同定されているもののみで9目24科35属の菌を含んでいる。また、55種7目12科17属に及ぶ地下生菌・半地下生菌が含まれ、この中には日本新産種・新種も少なくない。これらのうち78菌株をミヤマヤナギに接種した結果、36菌株(26種)で発達した菌根の形成が見られた。アセタケ属は菌根菌の属として最も主要なものの一つであるが、その分離・培養は非常に困難であると考えられており、培養株を用いた接種実験は行われていない。今回アセタケ属であるクロトマヤタケの分離・培養・菌根合成・子実体形成ができたことは、今後のアセタケ属による菌根共生の機能解析に道を開くものであると考える。また、ミヤマヤナギから分離した菌株のほとんどはミヤマヤナギに感染したが、ミヤマヤナギ以外から分離した菌株の中でミヤマヤナギと親和性を示す菌種の比率は顕著に低かった。このような菌根菌の宿主特異性は、ミヤマヤナギが優占する灌木群集から外生菌根性の高木樹種が優占する森林へと向かう植生遷移において、大きな影響を及ぼすものと考えられる。
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© 2004 日本林学会
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