日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3113
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土壌の窒素無機化特性にたいするヒノキ落葉および細根分解の影響
*藤巻 玲路武田 博清
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抄録

京都市近郊のヒノキ林において落葉および細根の分解実験を行い、土壌の窒素無機化に対する分解基質の影響を考察した。実験は2mmメッシュの円筒形バッグに土壌基物を詰めて林床に埋設する事により行い、その際に分解基質として、ヒノキ落葉を土壌基物上部においたバッグ(落葉区)、細根を土壌基物に混ぜたバッグ(細根区)を用意した。分解基質の重量減少パターンは、落葉と細根とでよく似ていたが、窒素動態は異なる傾向を示した。分解にともない落葉では窒素濃度・含有量ともに増加したのに対し、細根では窒素濃度の増加は明瞭ではなく、窒素含有量は減少した。このことから、分解過程初期において落葉が周囲土壌に対して窒素のシンクとして、細根は窒素の供給源としてそれぞれ機能することが考えられる。また、可溶糖濃度は落葉で大きく減少しており、分解初期において土壌微生物に対する可溶糖の可給性が比較的高いことが示唆される。土壌基物の実験室培養の結果、呼吸量および窒素の純無機化速度では、落葉区と細根区で有意差は認められなかった。しかし呼吸量と窒素の純無機化速度との関係において両者に違いが見られ、落葉区においては有意な相関関係は認められなかったが細根区では有意な正の相関が認められた。このことは、落葉区では細根区に比べ、微生物の活性に対して微生物体からの窒素の純放出がおきにくい事を示唆している。分解基質による窒素や可溶糖の可給性の違いが、土壌微生物の活性と窒素の無機化との関係に影響したためと考えられる。

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© 2004 日本林学会
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