日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3126
会議情報

立地
ADR土壌水分計による含水率変化の高分解能測定
*三浦 覚重永 英年
著者情報
キーワード: ADR水分計, 土壌水分
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 TDR (Time Domain Reflectometry) 法やADR (Amplitude Domain Reflectometry) 法による誘電率水分計は、土壌の体積含水率(以下、含水率)測定に広く利用されている。本研究では、ADR法による誘電率水分計を用いた含水率測定において、プローブ性能を最大限に引き出すための測定条件について検討する。 ADR水分センサーはDelta-T Devices製のProfile Probe PR1/4(以下、Profile Probe)を使用し、データロガーは、HIOKI製メモリハイロガー8421を用いた。ロガーは、±1 V (分解能0.05 mV)または±10 V(分解能0.5 mV)のDC電圧測定レンジを用い、10秒ごとに瞬時値を記録した。供試土壌には、森林総合研究所千代田試験地にある平面ライシメータの関東ロームと第三紀層山砂を用いた。縦横2×2 m深さ1 mのライシメータに充填されたこの2種類の土壌と立木有無の組み合わせを変えながら、2003年7月から10月まで含水率を測定した。Profile Probeの出力と供試土壌の含水率とのキャリブレーションには、Delta-T Devices製のADR誘電率水分計Theta Probe ML2(以下、Theta Probe)を利用した。ライシメータをシートで覆って降雨を遮断して乾燥させながらロームと山砂区のA層(0-7 cm)とB層(20-27 cm)でTheta Probeにより誘電率(ε)を測定し、続いて同位置で100 mLの採土円筒試料を採取して炉乾法により含水率(θ)を測定し、ε-θ較正式を作成した。 ロームと山砂は土性が異なるために、ε-θ直線には大きな違いが認められた。特にロームのε-θ直線の切片と傾きは、メーカーが与えている鉱質土壌や有機質土壌の汎用パラメータから大きくずれており、汎用パラメータを用いると著しく過小評価する結果となった。出力電圧300 mV付近では同じ誘電率測定に対して、ロームの含水率は山砂より10%程度高かった。無降雨期の立木区の含水率は明瞭な日変動を示した。立木区の含水率の日減少率は、ロームでは0.025 (5 cm深) から0.005 m3 m-3 (35 cm深) 、山砂では0.040 (5 cm深) から0.010 m3 m-3 (35 cm深) であった。 ロガーのDC電圧測定レンジを±1 Vから±10 Vに変えた場合には、電圧分解能の違いにより測定精度に違いが認められた。ローム15 cm深の1 V(分解能0.05 mV)レンジで得られた平均0.368 m3 m-3、標準偏差0.0005 m3 m-3に対して、±10 V (分解能0.5 mV)のレンジに変更すると平均0.371 m3 m-3、標準偏差0.0014 m3 m-3に変化した。 土壌の含水率測定に利用されるデータロガーの多くは、電圧記録の分解能が0.5-1 mVである。Profile Probeの測定レンジの中央部に当たる出力電圧300 mV付近では、出力電圧1 mVの差は、含水率に換算するとロームで0.0010-0.0013 m3 m-3、山砂で0.0015-0.0016 m3 m-3に相当する。これを有効土層深を考慮して水高換算すると3_から_5 mmで、日蒸散量と同程度の値となる。分解能1 mVのロガーによる測定は土壌水分の日減少量の評価には利用できるが、日変動の解析には十分とはいえない。本研究で用いたHIOKI製ロガーのレンジ±1 Vの分解能は0.05 mVであり、他のロガーに比べて分解能が1桁小さい。そのため、含水率にすると0.00010-0.00016 m3 m-3に相当する変化を検出できる。本研究で示したような短い時間間隔で多数のサンプリングを行い平均値を算出するか、測定インターバル中の平均電圧を測定すれば標準誤差が小さくなり、センサーとロガーの分解能の性能を最大限に利用した測定が可能になる。このような分解能の高い測定は、樹木による土壌水分利用過程を日変動のレベルで詳細に解析する際に有効である。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top