日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P4001
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樹病
ナラ類集団枯損被害の接着剤を利用した防除方法
*斉藤 正一中村 人史三浦 直美
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抄録

1990年以降,日本海側を中心に発生しているナラ類の集団枯損被害は,終息の目処は立っていない。 ナラ類集団枯損の防除法の研究は,斉藤ら(1999)が枯死木の樹幹下部にドリルで注入孔をあけてNCSくん蒸剤を注入することで樹幹内のカシノナガキクイムシ(以下カシナガ)を効果的に殺虫でき,Raffaelea quercivora(以下ナラ菌)の分散抑制を図る駆除技術を開発した。また,小林ら(2001)は健全木にビニールシートを巻付け樹幹部へのカシナガの穿入を阻止する予防技術を開発した。これら防除法に対して,作業が簡易・安全で効果的な防除法について建築用水溶性接着剤住友スリーエム製JA7562(以下接着剤)を利用した技術を開発した。1.殺虫剤と接着剤を利用したカシナガ駆除効果 枯死木樹幹内の殺虫率は,接着剤のみの散布では60%程度であるが,バークサイドE(以下MEP10)20倍液+接着剤処理では約70%MEP10の10倍液+接着剤処理では約80%の殺虫効果があった。またMEP10と接着剤の別散布と混合液散布との間には殺虫率に違いは無く,混合液散布のほうが作業性は2人1組で1日41本と効率的に処理できることが明らかになった。しかし枯死木内の殺虫率が80%と低いため激害地では期待するほどの駆除効果は得にくい。この方法は,傾斜が急な林分での補助的な使用が望ましいと考えられた。2.殺虫剤と接着剤を利用した予防効果 無処理の場合健全なナラ類の枯死率は3年間で65%に達するのに対して,スミパイン乳剤50倍液(以下MEP80)散布後に接着剤散布した場合は枯死率が8.3%,MEP80のみは16.7%,接着剤のみでは6.7%ととなり接着剤を樹幹に塗布する処理が枯死率を低下させる傾向にあった。接着剤を利用した予防法は,ビニール被覆の予防法と同等の予防効果を持ち,根曲や株立の立木の処理にも適していた。

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© 2004 日本林学会
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