日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P4020
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樹病
琉球列島におけるマングローブ植物の枝枯性病害
*亀山 統一
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抄録

 琉球列島の純マングローブ構成樹種のうち、枝枯れなど幹枝の壊死を示す病害は、メヒルギにおいてしか報告されていない。しかし、マングローブにおいて、とくに林縁部の個体や孤立木には、強いストレスを受け樹冠の変形などにいたる枝枯れ症状を呈するものも少なくない。その要因として、風波・落雷や動物による損傷・食害、漂着物による被陰などのみならず、病原微生物の関与も推測される。そこで、琉球列島の主要なマングローブ植物のうち、メヒルギとニッパヤシを除き、オヒルギBruguiera gymnorrhiza(ヒルギ科)、ヤエヤマヒルギ Rhizo-phora stylosa (ヒルギ科)、ヒルギダマシ Avicennia marina (クマツヅラ科)、ヒルギモドキ Lumnitzera racemosa(シクンシ科)、マヤプシキ Sonneratia alba (マヤプシキ科)の5樹種を対象として、病害調査を行った。 石垣島と西表島を調査地とし。石垣島では2002年7月_から_2003年3月に計4ヶ所(名蔵アンパル、宮良川、吹通川、底地川)、西表島では2002年7月_から_2003年10月に西表島で計7ヶ所(浦内川、星立、船浦川、美原、後良川、前良川、仲間川)のマングローブを調査地とした。干潮時に林内を流路沿いに歩行し、5樹種について病徴を探索し、衰弱・枯死した枝を採集した。得られた試料は、流水洗浄してから滅菌刀で小片に切り出し、アンチホルミン-エタノール系で表面殺菌後、平板培地に静置し、菌を分離した。培地としては、1/2濃度に希釈したPDA培地、および1.8%人工海水・0.15_%_MA培地に静置した。後者は、メヒルギ枝枯病菌などPDAでの生育のよくない菌類の分離を意図して用いたものである。伸長した菌叢を形態により類別し、樹種名の頭文字によりRs, Lr, Am, Saに番号を加えたものを菌株記号とした。分離率の高かった菌株を用いて、接種試験を行った。2003年5月に西表島美原(マヤプシキ)および船浦(他の樹種)にて、健全な宿主個体を選定し、その若枝の節間に、PDAによる培養菌叢を付傷接種(10反復)した。対照区として培地のみを接種した。病原性を示した菌株の同定など検討を進めた。 その結果、オヒルギを除く4樹種全てに病害と思われるシュートの枯死症状を見いだした。いずれの樹種の症状も、各調査地において多くの個体上に観察された。枝組織からの菌分離試験により、ヤエヤマヒルギについては1種類の菌Rs-1が高率で分離された。ヒルギモドキ、ヒルギダマシ、マヤプシキでは、それぞれ菌叢の形態の異なる数種類の菌が、比較的高率で分離された。そこで、これら4樹種について、それぞれ1,6,7,6種類の菌株を用いて接種試験を行ったところ、各樹種で病原性の疑われる菌株の存在が示された。一部の供試菌株では自然病徴が再現された。病原性が示唆された菌株の一部は培地上で分生子を形成し、そのうち、ヤエヤマヒルギに病原性の菌株はPhomopsisに、ヒルギモドキに病原性の菌株はPestalotiopsisに所属するものと思われた。病原性が示唆された菌株については、培地上での性質や、接種試験などの検討をさらに進めた。

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© 2004 日本林学会
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