現在、アカシア属樹種は東南アジアを中心として植林が盛んに行われており、主に紙の原料として使われている。樹種では特にA. manguimとA. auriculiformisの種間雑種(ハイブリッド·アカシア)は自然交雑種であり、成長および木材特性が極めて優れていることから、雑種集団から優良個体の選抜など育種的試みも行われている。しかし、自然林分からこのような自然交雑個体を選び出すことは必ずしも容易ではない。今回の研究では、A. manguimとA. auriculiformisに種特異的に出現するRAPDフラグメントのスクリーニングとそのSCARマーカー化を行った。144 RAPD+spプライマーを用い、一次、二次、三次スクリーニングを行った。その結果、種特異的なフラグメントがA. manguim で35本、A. auriculiformisで 29本得られた。特異的フラグメントの内、A. manguim 30本、A. auriculiformis 26本の塩基配列を調べて、それぞれ21個のSCARプライマー対を設計した。A. manguim に特異的SCARマーカー9個、A. auriculiformisに特異的SCARマーカー8個を開発した。今後、本研究で開発したA. manguimとA. auriculiformisに種特異的SCARマーカーを有効に活用することにより、アカシア雑種個体を容易かつ確実に選抜できることから、本マーカーはハイブリッド·アカシアのクローン林業の発展に貢献するものと思われる。