抄録
2010年夏季の猛暑は熱中症の多発という社会問題を生じ、東日本大震災後の我が国はエネルギーマネジメントに支障をきたし、真っ先に高齢者等の潜在的な気候変動弱者が猛暑酷暑の影響を受けた。森林・緑陰の公益的機能・多面的機能の一つである温熱環境緩和機能を見直し、こと酷暑に対応する暑熱シェルターとなる身近なグリーン社会インフラとして温暖化適応策に利用する施策を検討している。都市部やその近郊における身近な森林・緑陰の温熱環境を評価するために、埼玉県鳩山町の森林総合研究所・赤沼実験林内に試験区を設置し、温熱環境指数等を得る微気象観測を実施した。猛暑時における緑陰では日向の裸地と気温の差はほとんどないが、代表的な熱中症指数であるWBGT黒球湿球温度では2℃から3℃低くなる傾向があり、単木の日陰でも2℃ほど低下する。この差は熱中症指標ランクを一段階下げるほどに大きく、また日射のある猛暑時には単木の木立や緑陰で普遍的に観測され、緑陰の温熱環境改善機能が大きいことを確認した。熱中症指標ランクを下げるまでに及ぶ効果は、緑陰が暑熱シェルターとしての有意なポテンシャルを有していることを示す。