抄録
異なる成長段階のスギ人工林における遮断蒸発量の差異を検討するために、遮断蒸発に関連するパラメータである樹冠付着水分量Scと空気力学的抵抗Raの林齢による違いを調べた。まず、東京大学千葉演習林袋山沢水文試験地において2、3、4、5、12、75年生のスギ人工林を対象とした樹液流計測を行い、降雨後に樹冠が乾くのに要する時間(乾き時間)を求めた。次に、樹冠直上での気象観測結果とPenman-Monteith式から求まる乾き時間の計算値が観測値と一致するようにScとRaを推定した。その結果、樹木の成長に伴ってScは増大し、Raは減少する傾向が見られた。2年生と75年生のスギ林のScの推定値は、それぞれ0.2、1.6mmとなり、Raについては、それぞれ17、3s/mとなった。75年生のScについては、樹冠遮断量の観測値から求まる値と比較が可能であり、Leyton法によって得られた値(1.3mm)と同程度であった。調査地においては、対照流域法の実施によって林齢の増加に伴う流量の減少が報告されている。本研究の結果は、森林の成長に伴う遮断蒸発量の増大が流量の減少に寄与していることを示すと考えられる。