抄録
【目的】ヒノキ人工林の長伐期施業や択伐林施業では、個体管理的な視点での施業が必要となる。そのための管理指標を得るため、高齢ヒノキ個体の樹冠サイズと幹の肥大成長量を調査し、両者の関係を検討した。 【方法】段戸国有林(愛知県)で、約100年生のヒノキ人工林2林分に調査区(0.17ha・0.06ha)を設置し、毎木調査と円板採取を行った。毎木調査では、ヒノキの胸高直径・樹高・枝下高・樹冠幅を測定した。樹高と枝下高の差を樹冠長とした。円板は、各調査地内の間伐木の中から計10本を選び、それぞれの元玉の末口部位(地上高2.3~5.1m)で採取した。各円板について、読み取り顕微鏡を使用して、4方向の半径に対して、随から各年輪までの長さを測定した。 【結果】採取した円板の皮なし直径は15.4~32.2cm、その年輪数は69~80であった。樹冠サイズ(樹冠長・樹冠幅など)と直近(最近10年間・20年間・30年間)の平均年輪幅・平均断面積成長量とには、強い正の相関が認められた。この関係を利用すれば、ヒノキの「100年生時において期待する肥大成長量」に対する必要な樹冠サイズを推定することができると考えた。