抄録
山地流域における降雨流出・水質形成過程において、土壌―基岩境界面以下に浸透した基岩地下水の役割解明が求められている。本研究では、2003年直接採取している基岩地下水の水質・安定同位体比特性から、その役割を考察する。滋賀県桐生試験地内の小流域において、渓流水、斜面プロット下端からの流出水、堆砂地地下水に加え、基岩面から0.1、0.2、0.4、0.8、12、15、20m深の基岩地下水を採取した。風化に由来するSiO2濃度は基岩浸透過程で濃度が上昇した。渓流水中の濃度は0.8mおよび12mの濃度の中間程度であった。安定同位体比変動から計算した平均滞留時間は、基岩面以下1m以内では数ヶ月程度であったのに対し、12m、15mでは約50ヶ月、20mでは100ヶ月超となった。渓流水では30ヶ月程度と推定された。以上から、基岩浸透地下水は渓流流出に大きく寄与する層位が存在する一方、より深くに浸透し、当該小流域からの流出には寄与が小さい地下水が存在すると考えられる。この地下水は特に滞留時間が長いことから、動態・役割の解明には長期観測を要するが、時空間スケーリングにおいても鍵を握るであろう。