抄録
ブナの天然更新施業は母樹保残とかき起こしを併用する「母樹保残法」が実施されてきた。しかし、保残すべき適正な母樹本数について課題がある。前田・宮川(1971)や小山ら(2001)は30~50本/ha以上の母樹を残すべきとしているが、これらの知見は林分の全個体が大量結実することを前提としている。しかし、ブナでは個体間で結実頻度や量に違いがあることが指摘されており、それを考慮すると残すべき本数はもっと多くなると予想される。そこで、20年間の個体別の結実調査の結果から個体による結実習性(頻度と量)の違いを把握し、適正保残本数の算出を試みた。結実調査は約100年生ブナ二次林の84個体について、 1993年から20年間、目視により結実量を5段階で把握した(結実度0~4)。調査期間中は大豊作(健全種子が200個/m2以上)の年が3回、それ以外は並作か凶作だった。しかし、大豊作年でも全ての個体が結実度4になるのではなく、0~3の個体も存在した。それを考慮に入れると、従来報告されている保残本数では豊作年でも更新基準を満たすことができず、 125~150本/ha程度の母樹を残す必要があると示唆された。