抄録
樹木の辺材を上昇する樹液流の流速は、幹の方位ごとに異なることが知られている(例えば、Tsurutaら,2010)。しかし、既往研究では、樹種や林齢が一様な人工林樹種での報告例が多く、樹種や林齢の構成が多様な二次林を構成する樹木群についての報告が少ない。そこで、本研究では、東京大学生態水文学研究所赤津研究林の二次林の林冠を構成する主要樹種(アカガシ、コハウチワカエデ、タムシバ、アカマツ)の方位ごとの樹液流速の日変化の違いを明らかにすることを目的として、晴天日において、各樹種3個体の幹の複数方位における樹液流速を30分インターバルで計測した。その結果、広葉樹3種の方位ごとの樹液流速には、晴天日にもかかわらず、30分スケールなどの短時間スケールでの変動が見られ、その変動パターンは方位ごとに異なっていた。これは、広葉樹の林冠に当たる光の不均一性や広葉樹の辺材の通水特性に原因があると推察される。一方、針葉樹であるアカマツの樹液流速には、方位間で良好な直線関係が見られ、広葉樹に見られたような短時間スケールでの流速変動は見られなかった。