抄録
チシマザサは日本海側多雪地域の冷温帯から亜寒帯に広く分布するササの一種であり、日本海側に広く分布するブナ林床植生の主要な種である。タケ・ササ類は、長期にわたって地下茎を介した栄養成長を行い、広範囲にわたって一斉に開花・枯死する長寿命一回繁殖型の植物である(Makita 1992 ; Makita et al. 1993 ; 蒔田ほか 1995)。タケ・ササ類が1つの種子に由来する個体(ジェネット)の分布域を拡げていくということは、多種との競争だけではなく同種他個体との生存競争に大きな影響を与える問題である(蒔田 1997)。つまり、タケ・ササ類の寿命について明らかにすることは、森林の生態系を考える上での基礎になるだけでなく、森林施業の面からの応用も期待できる。 新潟県苗場山標高900mに生育するチシマザサを対象に、林外、林縁、林床の異なる光環境下での寿命を調査したところ、林縁、林床、林外の順で長寿命であった。そこで本研究では、この異なる光環境下での寿命の差違に着目し、チシマザサの物質生産特性や生態的構造の視点からなぜチシマザサは林縁で長寿命であるのかを考察した。