外来木本種の駆除は、蒸散量、樹冠やリターを通過する、または遮断される雨量、土壌からの蒸発量の変化を介して、その森林生態系の水循環に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、海洋島である小笠原諸島の森林生態系で大きなバイオマスを占める外来木本種トクサバモクマオウの駆除が、土壌水分環境に及ぼす影響を評価した。そのために、実験的にトクサバモクマオウを薬剤処理によって枯殺し、隣接する森林(対照区)と、表層土壌の含水量を比較した。また、駆除前後の土壌含水量の時間的な変化を調べた。その結果、枯殺した森林(駆除区)における土壌含水量は、対照区よりも大きかった。また、土壌含水量と、駆除したトクサバモクマオウの胸高断面積合計、リターの堆積量との間に正の相関が見られた。駆除後の降雨の後に続く乾燥期間に、駆除区における土壌含水量の減少の程度は、対照区よりも緩やかであった。以上の結果から、トクサバモクマオウの駆除は、土壌含水量を増加させ、この程度は、大きなバイオマスの消失(蒸散量の減少や樹冠通過雨量など)やリターの堆積量の減少(土壌からの蒸散量の増加など)と関係している可能性がある、ということが示唆された。