ナラ枯れとは、カシノナガキクイムシの繁殖に伴い、ミズナラとコナラなどの樹木が枯死する森林被害である。主な被害地となっているのは旧薪炭林であり、全国的な被害の状況をみると、被害地は1980年代以降に急速に拡大している。ところが、ナラ枯れ被害について、県レベルでの広域的な範囲をカバーした発生と拡大についての調査研究は不足している。そこで、本研究では、1994年から継続して被害地を記録している滋賀県に着目し、GISを用いたナラ枯れ被害の情報整理、地理条件との解析を行った。 その結果、滋賀県におけるナラ枯れ被害は、2004年までは初期に発生した県北部のみにとどまっていたが、2005年以降に急激に被害範囲が南部に拡大し始めたことが明らかになった。以降、年ごとに被害地は南部へと推移し、現在では南部の山地が被害の中心となっている。県内の被害は最盛期を過ぎたと考えられるが、未だ被害を受けていない地域では警戒が必要である。 ナラ枯れ被害後の回復状況を調べると、場所によって大きな差が見られ、更新において重要な役割を持つ後継木の有無について、シカ食害が関係していることが考えられた。