近年全国で個体数が増加しつつあるニホンジカが、広葉樹造林に与える影響を明らかにするため、山梨県内の24箇所の広葉樹造林地における剥皮発生状況(ただし、天然更新木を含む)を2013年夏季に調査した。各調査地のサイズは10 x 40 mで、調査地内の胸高直径が3 cm以上の全個体の周囲長と剥皮率(周囲長に対する剥皮された部分の割合)を調査した。剥皮は、11年前の当該調査地におけるシカ摂食の発生の有無によらず現在のシカ密度が高い調査地で、サイズが小さい個体で発生しやすかった。また、調査した樹種の中では、アブラチャン、ウリハダカエデ、エンコウカエデ、オガラバナ、キブシ、ズミ、ホオノキ、ミズキは剥皮されやすく、クリ、サンショウ、シラカンバ、タカネザクラ、ダケカンバ、ブナ、ミヤマザクラ、ヤエガワカンバは剥皮されにくい傾向にあった。カツラ、ケヤキ、ミズナラ、ヤマハンノキなどは、これらの中間程度の剥皮されやすさであった。広葉樹造林を行う際は、造林箇所の現在のシカ密度や植栽樹種を考慮する必要がある。