はじめに
熊本県ではニホンジカの生息域が拡大する傾向があり、農林業被害は深刻であるが、生息密度が多少低下したと手応えを感じている地域が熊本県南部の人吉・球磨地方の一部に見られるようになった。これらの地域の取り組みを事例として整理し、他地域における施策の参考とするため調査を行った。
材料と方法
県が行った生息密度調査の結果から密度低減が見られた人吉市、球磨郡多良木町、球磨郡五木村の3市町村において、ニホンジカの捕獲に携わる地元狩猟者と市町村担当者を対象として聞き取り調査を行った。
結果
狩猟者が捕獲に消極的であった人吉市では、「シカ専従捕獲隊」を設置して捕獲数を増加させた。球磨郡多良木町では、高齢の狩猟者が体力を要さず捕獲効率の高い猟法としてくくりわな猟を積極的に選択し、高い捕獲実績をあげていた。球磨郡五木村では、相互扶助的な集落内のつながりを背景に狩猟者を総動員して捕獲にあたっていた。また食肉加工施設を設置してその運用を狩猟者に任せ、狩猟者自らが主体的・継続的に捕獲を行う仕組みを整備した。これらの事例から、捕獲従事者が主体的あるいは専従的に捕獲を行うことにより実績をあげている実態が見えた。