抄録
地域の森林に働きかけ、森林環境の健全化をはかるとともに、人間の心身の健康増進をはかることを目的とする森林療法を、山梨県大月市の放置針葉樹人工林(私有林)を利用し、2011年初夏から2012年秋まで計13回(毎月1回)、さらに2013年から約4か月毎に計3回の長期的な手入れ作業を行った。毎回、生理測定(唾液アミラーゼ・気分・血圧)→保育作業(間伐、玉伐り、枝払い作業など)→生理測定→リラクセーション→生理測定というプログラムを実施し、林内空間(林分密度・相対照度)の変化とともに、被験者のストレス変化(唾液アミラーゼ)と気分変化(活気、爽快感、いらだち感、緊張と興奮、疲労感、不安感、抑うつ感)を解析した。働く社会人を対象とした被験者のうち、今回は長期的に継続参加した被験者3名(男性2名、女性1名)の解析を1名ずつ行ったが、3名ともに活動前後におけるストレスには有意差はみられなかったものの、気分は活動後に有意に改善がみられ(対応のあるt検定)、気分の評価項目間にも相関関係が示された。この結果から、放置林であっても継続的に手入れ作業を行うことにより、被験者の気分の改善に影響を与えることが示唆された。