陸域生態系における熱・水・炭素循環を解明することは、地球規模での気候変動が生態系に及ぼす影響等を把握する上で重要である。近年、大気-植生間における熱・水・CO2フラックスを高い精度で求められる渦相関法を用いた連続測定が、様々な気候帯の森林において実施されている。しかし、気候変動に伴う気温の上昇により分布確率の低下が推測されている本州のブナ林について、群落スケールで継続的にフラックス観測を実施しているサイトは極めて少ない。本研究ではブナが優占する冷温帯落葉広葉樹林における顕熱(H)・潜熱(λE)・CO2フラックスの季節変化の特徴を明らかにすることを目的とし、群馬県利根郡みなかみ町に位置する日本大学水上演習林内の山頂に建設された観測塔において、渦相関法に基づく熱・CO2フラックス観測を実施した。また、葉量の連続的な季節変化を把握するために、樹冠を透過する波長別の光量子を測定した。その結果、HとλEの和に対するλEの比率は葉量の増減に伴った変化を示した。しかし、夏季における日中の下向きCO2フラックスは、葉量の増減はみられないが、緩やかに減少する傾向を示した。