漸伐施業は皆伐施業と比較して,生産事業を行いつつ各種の公益的機能の発揮が見込まれるなど,近年の国民の森林への要望に対応できる施業方法である。このため,各地で導入がなされ,現在は一斉林と同じく収穫の時期を間もなく迎える段階にある。しかしながら,この作業法は十分な研究がなされておらず,特に,労働条件が大きく変化した現在において過去の事例をそのまま復元することは現実的ではない。そこで本研究では,漸伐林において現在の生産システムの主流となる車両系高性能林業機械が伐出システムに導入された生産事業を調査し,次世代の主林木となる更新木の損傷について考察することによって漸伐作業の体系化の一助とすることを目的とした。上木の伐出により,更新木のおよそ半数に損傷が発生した。しかし,今後の経年変化による回復などを考慮すると約5,000本/haの立木密度で今後の主林木が確保された結果となった。