ナラ類集団枯損は、ブナ科樹木萎凋病によってブナ属を除くブナ科樹木が大量枯死することである。島根県では1986年に初めてナラ枯れが確認され、島根大学三瓶演習林のコナラ二次林では2007年に初めて萎凋病による枯死が確認された。ナラ枯れによって大量にコナラが枯死した後の森林構造を考える上で、進行中のナラ枯れの状況を明らかにすることは重要であると考える。そこで本研究では三瓶演習林における萎凋病による枯死個体の樹種や径級、分布、枯死率を調べることにより、ナラ枯れの状況を明らかにした。2013年と2014年に演習林内19haを踏査した結果、2014年までに萎凋病により枯死した個体は226個体で樹種は個体数順にコナラ、クリ、クヌギ、アベマキであった。さらに演習林内1haプロットでの2001年から2014年の毎木調査により、ブナ科樹木の枯死率は2001年から2006年が9.9%、2006年から2012年が12.2%、2013年が8.1%、2014年が12.5%であった。1ha内の健全個体は20~40cmの個体が多いのに対し、2014年までに萎凋病により枯死した個体は径級に偏りが見られなかった。本演習林では、萎凋病が最初に確認されてから7年経過した2014年に枯死率が最大となった。