森林性鳥類にとって、針葉樹人工林は一般に、繁殖期の主要食物資源である鱗翅目幼虫が広葉樹林に比べて少ないこと等から、繁殖には不適な環境であると考えられている。これまで演者らは、スギ人工林での研究において、日本の森林に広く分布するヤマガラが、5~6月に、林内に点在する広葉樹斑(パッチ)を食物供給源として利用して繁殖することを明らかにしてきた。本研究では、6~7月の2回目繁殖を含めて、繁殖期全体を通じての、人工林での食物利用に関する調査を行った。
調査地は、愛知県豊田市にある名古屋大学稲武フィールドの約55年生スギ人工林で、林内に最大で0.6 ha程度の複数の広葉樹パッチが点在する。2012~2014年に約60個設置した。その結果、のべ23つがいが営巣した。雛が11~14日齢時に、巣箱出入口をデジタルビデオカメラで9時間程度連続撮影した。ビデオ画像から、親鳥が運んできた食物の種類、時刻、回数を解析した。
いずれの時期も、大部分のつがいは鱗翅目幼虫をおもな食物としていたが、一部のつがいは直翅目を比較的高い割合で利用していた。今回は、繁殖時期や営巣場所周辺の特徴と食物利用の関係について検討する。