近年、観光やレクリエーションなどによる地域再生が注目されるようになり、森林や野生生物などに代表される自然環境が、魅力的な地域資源として活用されている。特に、直接的な資源利用ではなく、エコツアーなどで、見たり体験したりするだけの、資源の「非消費的利用」が国立公園や世界遺産地域で増加している。そこでは、自然環境の持つ「素材としての価値」とは別に、資源が利用者の持つ、いわば「消費文化」によって新たに資源化される現象も進行している。これは地域資源を所有や管理する地域関係者ではない、外部のアクターによる文化的価値付けによる資源化である。
しかし、こうした資源化プロセスや価値付けに対する分析はほとんどない。この発表では、資源に関与する関係者の関係で資源化プロセスが決定されると考え、それを「自然環境の文化資源化プロセス」における地域資源ガバナンスの形成と捉えて、世界自然遺産である知床半島(北海道)における自然資源の文化資源化の事例を用いて議論する。