本研究では、都市近郊林における利用・文化的サービスの最適な発揮を目的とした、ゾーニングの意義と課題について検討する。ゾーニングとは、ある目的を達成するために、一定単位の空間ごとに管理を行うための空間管理手法である。しかし、都市近郊林において、利用・文化的サービスの発揮を目的としたゾーニングに関する研究はあまり行われていないのが現状である。都市近郊林におけるゾーニングの検討に際しては、まず設定すべき管理目標を明確にする必要がある。例えば、山岳地域を対象とした事例では、原生的な自然体験の提供が重要であることから、来訪者の利用体験の質に着目した目標設定を行っている。都市近郊林においては、静的、動的なレクリエーション利用のほか、教育利用等といった多様な利用形態が想定されることから、活動間の調整を目的としたゾーニングの概念・手法の開発が求められる。例えば、対立する利用間の調整を図るためには、それぞれ別々の空間単位を割り当てる以外に、利用時間を割り当てるといった方法もある。また、ヒューマンスケールに対応した最適な空間スケールとゾーニング単位との関係についても、検討する必要がある。