森林生態系の一次生産や物質循環に対する細根動態の寄与については不明な点が多く、林床植生の役割が考慮された研究は少ない。北海道の代表的な林床植生であるクマイザサはバイオマスの約半分を地下部に配分するため、細根動態に影響すると考えられる。本研究では、ササを含めた細根動態と林分環境の関係及び細根形態特性を調べ、森林の細根動態における林床植生のササの役割を解明することを目的とした。調査は北海道北部に位置する4林分(人工林、天然林、二次林、ササ地)で行った。季節ごとに土壌表層10cmの細根バイオマスや形態を計測し、各季節の細根生産量をイングロースコア法で測定した。同時に林分環境(立木密度、地上部バイオマス、BA、地温、土壌含水量、土壌化学性)を測定した。立木密度やBAはササ細根バイオマスや全細根バイオマスと負の相関がみられたことから、樹木が少ない場所ではササ細根により全細根バイオマスが増加することが示された。年細根生産量はササと樹木が共存する天然林と二次林で大きかった。またササは樹木よりも細い形態の根を持つことが示された。以上より、林床植生のササが森林生態系レベルで細根動態に関与していることが示された。