日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: F01
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ミズナラとブナの林冠木における道管形成および個葉光合成の季節変化とシンクソースバランス
*鍋嶋 絵里工藤 佳代東 若菜石井 弘明船田 良
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抄録

樹幹の木部には葉で稼いだ光合成産物の多くが蓄積される。一方、木部の道管は個体の水輸送を担い、葉での光合成に必要となる。落葉広葉樹では、春先に葉と新しい木部とが形成される。特に、環孔材樹種では春先に形成された当年の孔圏道管が主たる通水を担い、その形成は開葉に先立って開始することが報告されている。これらの樹木では、葉と木部の形成および光合成の季節変化はどのように関連し、進行するのか?本研究ではミズナラとブナの林冠木を用い、葉の展開と最大光合成速度および樹幹の木部形成と木部内の貯蔵デンプンについて季節変化を調べた。
ミズナラでは展葉完了時期に当年最初の孔圏道管の形成が終了し、この時期の最大光合成速度は低かった。一方、ブナでは展葉の完了が早く、この時期には光合成速度も高かったが木部はまだ形成されていなかった。また、ミズナラはデンプンが当年の木部に見られた一方、ブナではほとんど見られなかった。これらの結果から、春先の炭素のシンク(葉と樹幹木部の形成)とソース(貯蔵養分と葉の光合成産物)の関係は両樹種で異なり、ミズナラの木部形成の炭素シンク能はより強く、貯蔵養分への依存度もより高いことが示唆された。

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© 2015 日本森林学会
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