森林域の渓流生態系では、渓畔林から供給される落葉が重要なエネルギー源となっている。福島第一原発事故によりもたらされた137Csは、多くが樹冠や落葉に付着している。林床と渓流内で分解程度が似た落葉の137Cs濃度を比較すると、渓流内落葉は林床の25%程度であることが報告されている。そこで本研究は、渓流内のスギ落葉からの溶脱と分解による137Cs流出を把握することを目的とし、リターバッグと室内実験を行った。調査は、二本松市東和大沢川(流域面積170ha;137Cs降下量100-300kBq m-2)に位置するスギ林渓流を対象とした。目幅13mmバッグにスギリター100gを封入し、瀬と淵の合計24カ所に設置し、75、150、250日後に回収した。また、4日と15日で回収する実験も行った。回収後に残存リター、堆積土砂、水生生物を分離しリターの137Cs濃度と重量を計測した。137Cs濃度は、設置4日後に60%に減少し、150日後には11%となっていた。同様の137Cs溶脱は室内実験からも確認された。リター重量は4~75日後は80%となり、150~240日後には30%程度となった。70日程度までは溶脱による137Csの流出、100日以降は分解による重量減少に伴った137Cs流出が発生していたと考えられた。