きのこ栽培に利用されるコナラの放射性セシウム濃度の将来予測に資するため、福島第一原発事故により放射性セシウムで汚染されたコナラ樹体中のセシウム分布を調査した。2014年3?4月に、福島県田村市都路の26年生コナラ林において、3個体の地上部と地下部をすべて伐倒掘り取りして現存量を調査し、部位別に分析試料を採取した。地上部はそのまま、地下部は洗浄したのちに乾燥させて、Ge検出器により134Cs, 137Cs, 40Kを測定した。137Cs濃度は、地上部地下部ともに、細くて木部の割合が少ない試料ほどが高かった。細根の137Cs濃度は464?1,502Bq/kgで、枝(1,296?2,174Bq/kg)や樹皮(621?2,082Bq/kg)よりやや低いが同水準であった。137Csの現存量の地上部地下部分布割合は、40Kの分布割合に比べて地上部の割合が7?15%多く、事故により直接汚染した樹皮と事故後の新生枝に多く存在していた。本研究により樹体内への137Csの広がりを調べる上で重要な初期データを得ることができた。しかし、樹皮から樹体全体への移動が平衡状態に達しているか否かや根からの吸収状況を知るには、さらなる調査が必要である。