日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: F08
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生理部門
ケニアの樹木は九州の樹木よりも葉の活性酸素消去能が高い―光合成の環境ストレス耐性(メーラー反応の能力)の数値化―
*津山 孝人乗冨 真理内海 泰弘
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抄録

メーラー(Mehler)反応は、葉緑体内で活性酸素の生成と消去を行うwater-water cycleの始めの反応であり、かつサイクル全体の律速段階でもある。植物はストレス環境下で光が過剰になると、メーラー反応によって酸素に電子を流し、電子伝達鎖の過剰な還元を回避する。生成した活性酸素はwater-water cycleにおいて消去される。クロロフィル蛍光測定を応用してメーラー反応の潜在能力を様々な植物で調べた所、裸子植物の方が被子植物よりも10倍高いことが分かった。針葉樹の多くは北半球高緯度地方の山岳部に生息しており、被子植物との間には地球規模でおおまかな棲み分けが見られる。我々は、メーラー反応が植物の環境ストレス耐性、ひいては生育場所を決定する一つの要因であると考えた。乾燥地でのメーラー反応の役割を調べるために、その能力を日本とケニアの植物(計136種)で比較した。ケニアには裸子植物は稀であるので、比較は被子植物間で行った。その結果、ケニアの乾燥地には同反応の能力が高い植物が多い(種数が多い)ことが分かった。この結果は、乾燥地への適応にもメーラー反応が寄与することを示唆している。

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© 2015 日本森林学会
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