日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: F09
会議情報

生理部門
スギ樹冠葉の冬季の光合成能力の評価
*飛田 博順北尾 光俊宇都木 玄齊藤 哲壁谷 大介川崎 達郎矢崎 健一小松 雅史梶本 卓也
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

施業に伴う生育環境の変化に対するスギの成長応答予測のためには,スギ針葉の光合成能力のパラメタリゼーションと共に、針葉の性質と光合成能力の関係の解明が必要となる。本研究では、スギ樹冠内の当年生と一年生の針葉の窒素含量と光合成能力(最大炭酸固定速度;Vcmax25)の季節変化を調べ,冬季のVcmax25の低下と針葉の窒素含量の関連を明らかにすることを目的とした。茨城県森林総合研究所千代田苗畑に生育する樹高約10 mのスギ成木を対象とした。樹冠上層と下層の切り枝(シュート)の光合成速度を実験室内で測定した。シュートは、針葉と軸(木化する部分)に分けて窒素濃度を分析した。シュート投影面積あたりの当年葉の窒素含量とVcmax25の関係は,6月から11月までは比較的安定していたが,12月以降大幅に変動した。シュートの単位重量あたりでみると,2月と4月の上層の当年葉のみ,窒素含量に対するVcmax25が顕著に低かった。以上の結果から,樹冠上層の当年葉で見られた冬季のVcmax25の低下は,針葉の窒素含量の低下では説明できないことが明らかになった。スギの成長モデルにおいて,陽樹冠のVcmax25が冬季の変色時に低下する点を考慮する必要性が示唆された。

著者関連情報
© 2015 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top