日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: T26-18
会議情報

森林生態系の放射性セシウム汚染とその対策
木質チップを用いる放射性セシウムの森林からの除染と里山の資源利用
*金子 信博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

放射性セシウムで広域に汚染された森林資源を利用するために汚染の強い媒体を除去する物理的な除染は、規模や費用の点で現実的ではない。人家から20mの範囲の除染(落葉剥ぎ取り、除間伐)は、汚染物質の多くがすでに土壌表層に移動している現在では、以前より効果が少なくなっている。また、植物の吸収による土壌からの移動はわずかである。一方、土壌表層に木質チップを敷設し、チップに生えるカビの菌糸が土壌からセシウムをチップへ移動させることを利用して、植物による除染の10から100倍のセシウムを除染できる。そこで、森林全体ではなく、人家の周囲を中心に、かつての里山利用が可能な範囲に限って伐採とチップ敷設を組み合わせることで、利用を停止することなく除染を進めることができると考えた。現在多くの地域で薪炭は長い間利用されておらず、シイタケ原木林や山菜利用も2011年の原発事故後、停止している。アクセスの良い里山利用に適した林分を皆伐し、その場でチップ化して1年程度敷設し、回収して木質バイオマスとして利用することで、森林の更新とエネルギー利用が可能であり、汚染の程度によって原木や山菜利用が再開可能となる。

著者関連情報
© 2015 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top