演者らはハナイグチの増産を目的に長野県内のカラマツ林で2010年より施業を行い,過去3回の本大会で施業後1-3年の概況を報告した.今回,施業後4年目までの概況を報告する.カラマツ人工林に10×10 m2のプロット(以下Pと略)を24個設け,16Pではカラマツ以外の樹木を皆伐して落葉層を掻き取ったのち,腐植層はぎ取りとハナイグチ胞子接種の組み合わせの4処理区(各4P)を設けた.8Pは対照区とした.全24Pでハナイグチとシロヌメリイグチの子実体発生状況を継続調査し,プロット内側8×8 m2のデータを中心に解析した.施業区でのハナイグチの累積の子実体発生量は平均186g/P,対照区では19g/Pで,両者に有意差が認められた(p=0.013).発生頻度でも有意差が認められた(p=0.007).4処理区と対照区の5区間比較では,子実体発生量と発生頻度では一部有意差は認められたが一貫した有意な傾向は認められず,その要因としてハナイグチと拮抗するシロヌメリイグチの発生が示唆された.子実体形成を誘導する環境因子として地温の低下が示唆され,土壌10cm深で17.5℃付近と推定された.