土壌が湛水すると根圏が低酸素環境となり、植物の生育の阻害要因となる。植栽地における湛水ストレスはインドネシアの石炭採掘跡地の緑化の際にも問題となっている。湛水ストレスに対する植栽候補樹種の応答性を明らかにすることを目的に、13種の熱帯造林木の稚樹を用いて9週間余りの湛水ストレス実験を行い、成長と光合成の応答を比較するとともに、湛水解除後の応答についても調べた。湛水処理34日後、ほとんどの種で湛水により地際5 cmの直径成長が促進されたが、樹高成長が促進されたものはShorea balangelanとCassia siameaのみであった。Aquilaria malaccensisとSwietenia macrophyllaでは主根の空隙率が湛水により増加した。湛水処理35日後、成熟葉の光飽和光合成速度が半数以上の種で湛水により低下したが、Hevea braziliensisやMelaleuca cajuputi、Mitragyna speciosa、S. balangelanでは低下しなかった。光合成の低下の原因としては気孔閉鎖によるものと光合成能力の低下によるものが示唆された。湛水解除後4日目の時点で、解除による気孔の閉鎖や光飽和光合成速度の低下は認められず、Cassia siameaでは湛水によって低下した光合成が解除後に回復した。