根圏低酸素環境下で植物が生育するためには、根でより多くの糖をエネルギー代謝に配分し、呼吸阻害によるエネルギー不足を補う必要がある。これまでの研究で、低酸素ストレス耐性種のMelaleuca cajuputiの根では低酸素ストレス初期に構造性画分への光合成産物の配分が減少し、可溶性画分への配分が増加することを確認した。本研究では、Melaleuca cajuputiの根圏低酸素環境下での根におけるリグニン生合成に関与する芳香族代謝を調べた。低酸素処理2日後の根で、ペントースリン酸経路の酵素活性やシキミ酸経路のシキミ酸脱水素酵素の活性に変化はみられなかったが、より下流にあるフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)の活性は著しく低下した。また、シキミ酸濃度に変化はみられなかったが、シキミ酸経路から分岐して生成されるガリック酸の濃度は増加していた。PALによって生成されるケイ皮酸濃度は減少したが、より下流にあるシナピン酸の濃度は変化しなかった。PALより上流の代謝は維持されているが、PAL以降のリグニン生合成経路中の様々な部位で代謝が滞っていることが示唆された。