日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
セッションID: F15
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生理部門
酸性および酸化性ストレスがブナの葉の遺伝子発現パターンに与える影響
*斎藤 秀之神村 章子瀬々 潤小倉 淳
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抄録

発現遺伝子を指標にした樹木のストレス診断技術の開発の一環として、ブナの発現遺伝子の環境ストレス診断指標を開発している。これまで酸性・酸化性ストレスは高温ならびに土壌乾燥ストレスと区別して診断できる指標性遺伝子を明らかにしてきた。しかし森林衰退問題での実践では、NOx、SOx、オゾンなど具体的な原因物質を特定して診断できる技術が求められる。本研究では、ブナの個葉を対象に硫酸、硝酸、オゾンを模した過酸化水素を塗布処理して、それらに反応する遺伝子の発現パターンの相違点をゲノム網羅的に解析した。対照に対して有意(t-test, p < 0.01)かつ7倍に増加した遺伝子の数は、硝酸特異的で62遺伝子、硫酸特異的で169遺伝子、硫酸と硝酸に共通で81遺伝子あった。また、有意(t-test, p < 0.01)かつ7倍に減少した遺伝子の数は、硝酸特異的で35遺伝子、硫酸特異的で7遺伝子、硫酸と硝酸に共通で0遺伝子あった。以上から、酸性ストレスにおいても硫酸と硝酸では反応する遺伝子の種類が異なり、酸性ストレスの種類を識別する指標として有望であることが示された。発表では、過酸化水素に対する反応結果も含めて報告する予定である。

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© 2015 日本森林学会
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