将来的な天然スギ林の資源量を検討する上で、長命な樹木の成長傾向を予測できる頑健なモデルは必要不可欠である。樹木の肥大成長は内的要因(サイズ、樹齢)と外的要因(被圧、個体間競争など)の影響を受けるが、300年生前後の個体の成長にどのような要因が影響を及ぼしているか定量的に解析した例は限られる。そこで本研究では、天然秋田スギ林の林分構造を調査し、個体特性とサイズ、競争および局所環境因子(光資源・土壌水分)がスギ個体の成長におよぼす影響をモデル化した。
秋田県内の仁鮒水沢と二ッ井七座山の調査区にて毎木調査を実施した。両調査区ともに平均胸高直径80-100cmのスギ大径木が林分上層に優占しており、中間層にはトチノキやイタヤカエデが優占していた。スギの成長傾向を解析した結果、樹齢300年前後の個体の直径成長量は、対象木自身の個体サイズに依存していなかった。光資源の利用可能性は成長に強く影響していた一方、対象木周辺の競争個体の混み合い度の効果は認められなかった。また土壌水分量は、樹高と正の関係性が認められたが、直径成長については至適範囲の存在が示唆された。