抄録
過去のスギ林被害調査の結果、スギカミキリ抵抗性のクローン間の差が明らかにされ、選抜育種が進められているが、精英樹実生家系の自然条件下での抵抗性を評価した報告は少ない。そこで、23年生次代検定林において、被害状況(脱出孔数、4段階の被害指数)、胸高直径を調査した。調査は、当検定林に列状に3反復で植栽されている関東産スギ精英樹自然交配17家系、在来2家系、人工交配4家系及び千葉県産精英樹(少花粉品種)2クローン、クモトオシ(感受性)、サンブスギ(抵抗性)を含む在来3クローンで行った。 調査の結果、検定林全体の被害率は56.0%と高く、スギカミキリ激害林であった。また、脱出孔数と被害指数に有意な正の相関(r=0.46、 P<0.01)が認められたため、脱出孔数を用いて分布の集中度を示すCA指数を算出したところ、被害木は集中分布していることが分かった。検定林全体ではクローン、家系、交雑品種それぞれで大きな差はなく、胸高直径の大きいもので脱出孔が多い傾向がみられた。