抄録
河道内の樹林化は流下能力の低下を引き起こすとして治水上の深刻な問題となっている。石川県手取川においても樹林化は進んでいるが、河積阻害が最大となる洪水時の河畔林の挙動に関する知見は乏しい。そこで2013年7月29日に手取川で発生した中規模洪水における河畔林の破壊・流出形態について調査した。洪水前後で撮影(2013年6月17日,同年8月14日)された航空写真と、同じく洪水前後で測量(同年6月16日-22日,同年8月10日-11日)されたLPデータを用いて破壊・流出した樹木の抽出を行った。そして、iRIC2.3によるシミュレーション再現を行い、洪水時の流況に対する河畔林の動態を解析した。対象樹木はハリエンジュとヤナギ類等の樹高3m以上のものを中心とした。解析の結果、樹木は中洲の上流部や川筋の湾曲部で河岸侵食を受けることで流出していることが確認された。これより河畔林の破壊・流出の主要因は洗掘流出によるものと推測される。同洪水を対象とした先行研究では、3m未満の樹木は倒伏による埋没であることを踏まえると、アキグミ等の水面近くに繁茂する先駆的低木は倒伏によって、ハリエンジュやヤナギ類は洗掘によって破壊され流出していったと考えられる。